プログラミング教育必修化の最新動向と課題

政府は2016年4月に開いた産業競争力会議の中で、2020年度を目標に小学校におけるプログラミング教育必須化の方針を発表しました。

これを機に教育関係者や関連企業などを中心に、同分野への関心は高まりを見せ、さまざまなメディアでプログラミング教育の話題が登場する機会が増えています。

「本当に小学生にプログラミング教育が必要なのか」
「教員にプログラミングが教えられるのか」

など、プログラミング教育の導入については依然として議論があり、課題も山積みだ。一方で過渡期ともいえるプログラミング教育の将来に可能性を感じ、新規参入を目指す関係者の動きも広がっています。

小学校におけるプログラミング教育は、現在どのような状況にあるのか。今後の課題は何か。あらためて動向を整理しておきましょう。

プログラミング教育が生まれた背景

プログラミング教育は新学習指導要領で小学校から必修化されることが決まりました。第4次産業革命と呼ばれる今、生活のなかではプログラミングが身近に存在し、多くの日常生活が支えられています。

その存在を理解することが欠かせず、こうした時代に生きる子どもたちにとって不可欠な知識や考え方を学ぶために、小学校から取り組むこととされました。

学習指導要領の議論の中では、その資質・能力を次の3つだと定義しています。

  • 情報を読み解く
  • 論理的・創造的思考による課題発見・解決能力
  • よりよい社会や人生のあり方について、学んだことを活かす

こういった背景から、コンピュータの社会における役割を理解しつつ、これらの必要な資質・能力を身につけることが求められています。そのためこれらの資質・能力を理解するために、プログラミング教育が生まれたのです。

プログラミング教育の目的

小学校では「プログラミング言語によるプログラムの記述(=コーディング)」を覚えることがプログラミング教育の目的ではない、とも記載があります。

あくまでも、上記の資質・能力を身につけるために、プログラミングの考え方を生かしていこう、といった論理です。

その目的は、新学習指導要領の総則では、「児童がプログラミングを体験しながら,コンピュータに意図した処理を行わせるために必要な論理的思考力を身に付けるための学習活動」に取り組むこととされています。解説では、次のように明記されています。

「小学校段階において学習活動としてプログラミングに取り組むねらいは,プログラミング言語を覚えたり,プログラミングの技能を習得したりといったことではなく,論理的思考力を育むとともに,プログラムの働きやよさ,情報社会がコンピュータをはじめとする情報技術によって支えられていることなどに気付き,身近な問題の解決に主体的に取り組む態度やコンピュータ等を上手に活用してよりよい社会を築いていこうとする態度などを育むこと,さらに,教科等で学ぶ知識及び技能等をより確実に身に付けさせることにある。」

新学習指導要領解説編 総則より、プログラミング教育の部分を抜粋)

プログラミング教育で養う「プログラミング的思考」とは

ではその「プログラミングの考え方」とは何でしょうか。プログラミング教育の目指すところは、「普遍的に求められる力」としての「論理的思考力」を身につけることだと説いています。有識者会議でのまとめには、次のように記載があります。

プログラミング教育とは

子供たちに、コンピュータに意図した処理を行うように指示することができるということを体験させながら、将来どのような職業に就くとしても、 時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」などを育成するもの

プログラミング的思考とは

自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力

プログラミングでは、ある抽象的な動作・処理を、細かく最小限のステップへと分解して分類し、順番に実行していくことである動作を実現しています。

このように物事を分解して本質を見極め、分類して整理することによって、論理的な構造について考える力を養うことを、プログラミング教育では求めているのでしょう。

つまりプログラミングだけを教えるのではなく、教科のねらいに絡めて教えることが求められているというわけです。



どんな授業になる?

先ほど書きました通り、小学校段階におけるプログラミング教育では、将来どのような職業に就くにしても、時代を超えて普遍的に求められる力としての「プログラミング的思考」を育成します。

プログラミング言語の使い方を覚えることが目的ではありません。

プログラミング教育の導入とともに、情報を収集・整理・発信する力、文字入力などの基本的な操作技能、情報モラルといった「情報活用能力」も重要視されています。

ICT環境が整備され、ICTを活用した学習も増えると考えられます。

■小学校におけるプログラミング教育の実施例

総合的な学習の時間 自分の暮らしとプログラミングとの関係を考え、その良さに気づく学び
理科 電気製品にはプログラミングが活用され、条件に応じて動作していることに気づく学び
算数 図の作製において、プログラミング的思考と数学的な思考の関係に気づく学び
音楽 創作用ICTツールを活用しながら、音の長さの組み合わせなどを試行錯誤し、音楽を作る学び
図画工作 表現しているものを、プログラミングを使って動かすことにより、新たな発想や構想を生み出す学び
特別活動 クラブ活動において実施

プログラミング教材ってどういうものがあるの?

プログラミング教育で使われる教材にはどのようなものがあるのでしょうか?

1.コンピュータを使わないプログラミング(アンプラグド)

コンピュータやタブレットでプログラミングを使わず、代わりにカードなどを用いてコンピュータの基本的な仕組みや特徴を考える方法です。

小学校の低学年など、初めてプログラミングに触るときに、アンプラグドの実践事例が多いでしょう。

2.ソフトを使うプログラミング

ソフトを使うプログラミングとは、コンピュータやタブレットでプログラミングを使わず、代わりにカードなどを用いてコンピュータの基本的な仕組みや特徴を考える方法です。

具体的には、「Scratch」などブロックをつなぎ合わせるだけでプログラミングができるビジュアルプログラミングと、本格的にテキストを入力するものがあります。

無料で使えるから有料のものまでさまざまです。

3.ハードを使うプログラミング

ハードを使うプログラミングとは、ロボットなどのハードをタブレットやコンピュータ上で制御し動かすプログラミングのことです。

例えば、レゴエデュケーションの「レゴ®マインドストーム®EV3」や株式会社アーテック社の「アーテックロボ」などは見たことある方も多いでしょう。

さまざまなセンサを使えることも特徴です。

必修化に対する課題や反応

先頃、コンピュータソフトウェア協会プログラミング教育委員会は、小中学校の教職員とした「情報教育に関するアンケート」の結果を公表しました。

このアンケートは、2020年に始まる初等教育におけるプログラミング教育必修化に向け、学校現場の教職員が日頃どの程度ICT機器を利用し、どういった課題を抱えているのかを調査するために実施したものです。

アンケートでプログラミング教育普及のための課題として多くあげられた項目を列挙しますと

  • ICT機材・ネットワーク環境の不足
  • 教員のICT活用指導力
  • 県・市・教育委員会の支援
  • 研修制度の確立、研修時間・指導人材の確保
  • 学習・研修時間の不足
  • 教員人材の不足
  • 学習環境の不足
  • 情報の提供(授業の参考となる実践例や指導案など)が必要

といった回答があがりました。教育環境の整備不足は、学習環境の格差につながる恐れもあります。

そんな不安を払拭すべく、総務省・文部科学省は「未来の学びコンソーシアム」などでプログラミング教育の普及・推進を図っています。

(2018年3月21日現在)

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